ブログ③脳神経内科研修中の話 1年目8月 久保 敏大
2022年10月05日 久保 敏大
2021年8月頃、脳神経内科で研修中のお話です。
私はヘトヘトでした。
日々の業務、サマリーや紹介状、返書の書き方にまだまだ慣れておらず、悪戦苦闘する毎日でした。
そもそも仕事が遅いのがいけないのですが不器用で浅学のため仕方がありません。
その日も午後5時の定時で仕事が終わらず、病棟で仕事をしていました。
ちなみにですが、
☆医師会病院研修医の勤務時間規定 午前8時30分~午後5時 です。
残業はしてもいいししなくてもいいです。
指導医からは徹底して5時に帰っていいよと言われます(言われない時もあります)ので
安心して医師会病院の研修にご応募ください。
日が沈み消灯時間が近づいた頃、
夕方の回診をできていなかったことに気がつき、検査目的で入院中の患者さんを訪室しました。
ベッドに腰掛け、懐中電灯を握りしめた男性患者さん。
「その懐中電灯はどうしたんですか?」
尋ねると照れ臭そうに理由を教えてくれました。
「私はここ(病室)から見えるマンションに妻と2人で住んでいてね、ほら、あの辺。見える?
消灯して眠る時におやすみの挨拶を懐中電灯でするんだ。懐中電灯を2回光らせて。
この年になっても妻はね、私がいないと眠れないんだって。もう少し待っていたら先生も見られるよ。」
照れ臭そうに言いながら、穏やかな表情を浮かべていました。
携帯電話でもおやすみが言えるけど、
懐中電灯のおやすみの光は暖かく、お互いの無事を祈っていて、私の心はとても温まりました。
患者さんは病と戦うために入退院します。
私はそれを助ける仕事が医療職だと思います。
穏やかな表情を守るための手助けができるならそれはなんて幸せな仕事でしょうか。
私は2人の時間を邪魔したくなく退室しました。
ヘトヘトだった体が元気になったようでした。
〈医師会病院からの夜景〉
病院からその患者さんの家の方角を見る度に思い出して心が温かくなります。
※ブログへの記載了承済